エリート御曹司は溺甘パパでした~結婚前より熱く愛されています~
「記憶がなかったということを理解したかと言えば、ちょっとあやしいです。でも、少なくともここに来てからの宏希さんとの生活が楽しくて、宏希さんと一緒にいたいと思っていることは嘘じゃない」
そうでなければ、あんな笑顔は見られない。
「忍……」
切なげな表情を浮かべる彼は、私を抱き寄せる。
「俺、こんなにふたりに苦労させておいて、幸せになりたいなんて身勝手だとわかってる。でも、三人で生きていきたい」
彼も十分苦しんだはずだ。
記憶がないことを悔やみ、そして和宏の存在を知ってからは懺悔を胸に抱いて。
もう、そんな苦しみからは解放してあげたい。
私たちは彼に再会して、十分すぎるほどの幸せを感じているから。
「私も和宏もそう望んでいます。ずっとそばに――」
声がかすれて続かない。
すると彼は背中に回した手にいっそう力を込めた。
そして不意に私を抱き上げてリビングを出ていく。
「宏希さん?」
「しーっ。和宏が起きるから」