エリート御曹司は溺甘パパでした~結婚前より熱く愛されています~

「いいえ。内助の功を一番感じているのは、父さんではありませんか? 私が中学生の頃、大きな契約を他社に持っていかれて会社が傾きかけたのを救ったのは、母さんです」


宏希さんが指摘すると、お父さまは目を見開き、お母さまは視線を落とした。

どういうことだろう。


「あきらかに動揺して取り乱していた父さんを、母さんは一度だけ叱りましたよね。『あなたひとりで闘っているのではありません。従業員も私たち家族も一蓮托生。信じています』と。そのとき私は、レーブダッシュのために生涯を捧げようと決意しました」


お母さまがそんなことを?

一見、控えめでお父さまに意見することなんてなさそうに見えるのに。

いや、一度だけと言うのだから、その印象は間違いではないのかもしれない。


「それは……」

「そのあとですよね。レーブダッシュがV字回復を遂げて、業界一位まで駆け上がったのは。母さんは仕事にはノータッチですけど、心はひとつなんだと胸に刻まれました」
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