エリート御曹司は溺甘パパでした~結婚前より熱く愛されています~
そう。彼も苦しんできた。
記憶がない自分を責め続けて生きてきたのだ。
しかし、もうおしまいにしたい。
「波多野さん。和宏くんはたしかに宏希の子なんだね」
「はい。宏希さんとの間にできた子です。私は、宏希さんしか愛せません」
突然振られた質問に驚いたものの、キッパリと答える。
するとお父さまはもう一度宏希さんを見つめた。
「お前を慕う部下が多数いることは聞いている。しかも、各部署に。三年後をめどにに社長の席を譲る。そのつもりでいなさい」
それって……。
「それと、今度孫の顔を見せに来なさい。母さんも会いたいだろうし」
「そう、ですね。今までできなかった分、うんと甘やかさなくちゃ」
お母さまの目からポロリと涙がこぼれたのを見て、すべてが許されたのだと悟った。