エリート御曹司は溺甘パパでした~結婚前より熱く愛されています~

足を踏み入れたときの緊張とは違う温かな感情に包まれて、浅海邸をあとにした。

車に乗り込むと宏希さんは口を開く。


「和宏にお土産買っていこうか」

「はい。エール・ダンジュのケーキがいいかも」


聞けば〝エール・ダンジュ〟とは、天使の翼という意味らしい。

私たちのところに飛んできてくれた天使にぴったりのお土産だ。


「そうしよう。忍はまたチョコレートケーキ?」
「当然です」


笑顔を作ったのに、許されたという安堵で声が震える。
すると彼は、身を乗り出してきて私を抱きしめた。


「忍、ありがとう。俺に未来をくれて……ありがとう」
「宏希さん……」


それは私のセリフだ。


「捜してくれてありがとうございます。和宏と私に幸せを――」


それ以上言えなかったのは、熱い唇が降ってきたからだ。

彼は下唇を甘噛みしてから離れていくと、私の頬を両手で包み込み、真摯な視線を送ってくる。


「もう、離さない」
「はい」


うなずくと、もう一度唇が重なった。
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