エリート御曹司は溺甘パパでした~結婚前より熱く愛されています~
「大丈夫、誰も見てない」
「ん?」
宏希さんの声に反応した和宏がふと私たちを見上げるので、焦りに焦り瞳が右に左に動き回った。
「あはは。なんでもないぞ。このまま勝てるかな」
「うん!」
朗らかな和宏の笑顔は、私たちの幸せの象徴だ。
「おっ、次のプレーが始まる」
宏希さんに指摘された和宏は無意識なのか彼の手を強く握りしめて、再び食い入るようにピッチに視線を送る。
こうした温かで充実した時間を積み重ねて、少しずつ進んでいこう。
なくした記憶も時間もすっかり取り戻すことはできなくても、私たちの新たな歴史を築いていけばいい。
私は茜色に染まる西の空を見上げて、果てしなく続く幸福の詰まった未来へと思いを馳せて微笑んだ。
【END】