エリート御曹司は溺甘パパでした~結婚前より熱く愛されています~
違う。宏希さんはたしかに私を愛してくれた。
だってこの子も……。
そっとお腹に手を当てて考える。
もし、赤ちゃんの存在を告白したらどうなる?
私と宏希さんのことを認めてくれる?
ううん。肝心の宏希さんに私の記憶がないのだから、ありえない。
だとしたら……。
ひとつの可能性に気づいてしまい、背筋が凍る。
堕ろせと言われる?
それだけは絶対に嫌だ。
宏希さんとの間に授かった命を、なかったことになんてできない。
それなら……妊娠を悟られてはいけない。
「宏希の伴侶はもう決まっています。ですから波多野さんは波多野さんで幸せになってください」
テーブルの上に茶封筒を置かれ、中身を確認せずともそれが手切れ金だとわかった。
「このマンションは売りに出します。急に出ていけと言われても困るでしょうから、しばらくはお貸しします。早急に次の住居を探してください。それから、次の仕事も。退職の手続きはしておきますので、もう出社の必要はありません。再就職先にお困りでしたらこちらで用意しますので秘書に連絡ください。それでは」