エリート御曹司は溺甘パパでした~結婚前より熱く愛されています~
【めぼしい選手のデータは私のパソコンの〝経歴〟というファイルにあります。パソコンのパスは、0825】
書きながらあふれ出てくる涙を懸命に拭った。
このパスは、宏希さんの誕生日。
そして彼のパソコンのパスは0922。私の誕生日だ。
パソコンのファイルに詰まっている情報は、必死に走り回る宏希さんの役に立ちたくて、片っ端から調べたもの。
思えばこの作業を通して彼との距離が近づいた。
ふたりで一緒にデータをのぞき込んで、あれこれ分析をしては資料を作り、彼はそれをもとに、スポンサー契約する選手やチームを選定していった。
それがことごとく当たり、『忍の分析力はレーブダッシュの重要な戦力だ』と褒めてもらえた。
あの頃のことを思い出すと、涙が余計に止まらない。
けれど、過去には戻れないのだ。
それからは涙を拭くのも忘れてひたすら仕事に関する内容を打ち続けた。
そして最後に……。
【どうかお幸せに】というひと言だけ添えて、歯を食いしばりながら送信ボタンを押した。