エリート御曹司は溺甘パパでした~結婚前より熱く愛されています~
「ママ、どうかしたの?」
「ううん、なんでもない。それじゃあ、今日は和宏が卵を切る?」
「うん!」
まだふとした瞬間に、宏希さんのことを考えてしまう。
憎みあって別れたわけではないので、簡単には忘れられないのだ。
彼は幸せに暮らしているだろうか。
昨年、レーブダッシュの取締役に就任して専務になったことは知っている。
でも、プライベートは知る由もない。
あのお見合い相手と結婚したんだろうな……。
そう思うと胸がチクリと痛むが、もう私には関係のないことだった。
「わー、これがいい!」
翌日の土曜。
和宏を保育園に預けて店で接客をしていると、小学生くらいの男の子がレーブダッシュのサッカーシューズを手にして目を輝かせている。
「こちら、Jリーグの選手がよく使用しているんですよ。現場でもかなり使用感がいいと好評で、発売から一気に人気商品になり一時は品薄でした」