エリート御曹司は溺甘パパでした~結婚前より熱く愛されています~
「波多野さんのことを思い出したくて必死に記憶をたどっても、どうしてもあの頃のことは出てこない。それなのに、波多野さんを公園で見つけたとき、ここがすごく苦しくなった」
宏希さんは自分の胸をトンと叩く。
「最後のメールを見たときもそうだった。仕事について淡々と書かれていただけなのに、脳の中の引き出しが開きそうで開かなくて、すごく苦しくて。でも、これらの仕事をきっと波多野さんと楽しくやったんだろうなと感じた」
その通りだ。
簡単ではない案件もたくさんあったが、彼と一緒ならいつも楽しかった。
「そうですね。浅海さんとの仕事はとても楽しかったです。ですが、過去の話です」
強めの口調で言ったのは、彼にすがりたくなる自分の気持ちをたしなめるためだ。
すると彼は眉根を寄せ、困惑の表情を浮かべた。
「お見合い相手の方と結婚されなくて大丈夫だったんですか?」