エリート御曹司は溺甘パパでした~結婚前より熱く愛されています~
「俺……波多野さんとなら、そんな恋ができる気がするんだ」
どうしてそんなことを言うの?
必死になって忘れようとしてきたのに、どうして……。
「私は……和宏がいればいい」
あとになってやっぱり無理でしたなんて言われたら、もう耐えられない。
「どうして?」
「浅海さんは、和宏が自分の子かもしれないと疑って、責任を取りたいだけです。そんな押しつけがましい愛はいりません」
また彼と一緒にいられるなら、本当はそれでもいい。
しかし、責任感の強さに付け込んで記憶のない宏希さんに私たちのことを背負わせても、彼が幸せになれない。
「ごめん」
彼はそれきり黙り込む。
そして私は泣きたいのを必死にこらえた。
しばらく沈黙が続き、点滴の液剤がポタポタと落ちてくる様子をボーッと眺めていた。
今はなにも考えたくない。
彼ともう一度始めたいという気持ちがあふれてしまいそうで怖い。