エリート御曹司は溺甘パパでした~結婚前より熱く愛されています~

しかも記憶がないはずの宏希さんが、ひと口食べて「懐かしい味だ」とつぶやいたときはドキッとした。

もしかして、こうして一緒に暮らしていたらいつか私との過去を思い出すんじゃないかなんて淡い期待を抱いたりして。


夕食のあとは、宏希さんが和宏をお風呂に入れてくれて至れり尽くせり。

私は親子のように振る舞う宏希さんの姿を見ては、瞳を潤ませていた。


興奮しすぎてコテンと眠った和宏を寝室に残して、リビングに向かった。

すると彼はソファに座ってなにやら書類を手にしている。


「浅海さん、本当にありがとうございました。これから、よろしくお願いします」


深々と頭を下げると「こちらこそ」と微笑んでいる。


「コーヒーでもお淹れしましょうか? あっ、紅茶がいいですね」
「紅茶……」


彼は私の発言を聞き、視線を宙に舞わせる。


「すみません。コーヒーがよかったでしょうか?」

「いや。なにかが頭の中に浮かんだ気がして。紅茶に思い出があるのか……」
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