エリート御曹司は溺甘パパでした~結婚前より熱く愛されています~
それを聞き、心臓がドクッと跳ねた。
カギのかかった記憶の引き出しが、カタカタと音を立てている気がしたからだ。
「会社ではコーヒーばかりでしたので、家では紅茶を飲むことが多かったんです。疲れたときはアールグレイにほんの少しはちみつを垂らして」
はちみつには疲労回復の効果があると聞き、そうしていた。
「そうだったのか。お願いできる?」
「はい」
うれしそうに微笑む宏希さんの姿に、胸が熱くなる。
はちみつを入れたアールグレイをテーブルに置くと、すぐさまひと口飲んでいる。
「はー、うまい」
「大げさですよ」
でも、彼はこういう人だった。
私が作る料理や飲み物をいつもおいしそうに口にしていた。
「あの……これをお返ししたいのですが」
私は床に正座をして、ポケットから封の開けていない茶封筒を取り出し、テーブルに置いた。
「これはなに?」
彼は手にして首をひねる。