エリート御曹司は溺甘パパでした~結婚前より熱く愛されています~
着々と記録を伸ばしてはいたけれど、ケガをしてから記録が出なくなり契約も頓挫した。その後引退したはずだ。
「この選手と契約することになりそうなんだ。波多野さんも関わっていたよね?」
「はい。でも、ケガをして一線を退いたんじゃ……」
それなのに契約するってどういうこと?
「最近、テレビは見ないの?」
「はい。忙しくてなかなか」
「そっか……」
彼はそれから書類を何枚かめくった。
「日本選手権優勝?」
まさか復帰しただけでなく、日本一に輝いていたとは。
「そう。ケガを克服して復活したんだよ。オリンピックでメダルも期待されている。波多野さん、俺にこの選手には伸びしろがあると言っていたそうだね」
「そうです」
「部長が、波多野には先見の明がある。波多野の言うことはいつも正しいと自慢げに吹聴していたよ」
それはきっと、宏希さんが私の情報収集能力を部長に何度も訴えてくれたからだと思う。