リペイントオレンジ🍊
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「尊の中には、今もなお消えない、消せないオレンジがある」
「消せないオレンジ……ですか?」
堀さんが教えてくれたのは、私が予想もしていなかった話だった。
海穂さんは、その話に耳を傾けながら何かを思い出すようにちまちまとお酒を口に運ぶ。
「あれはまだ、尊が17歳のとき。尊には西川 紬季(にしかわ つむぎ)ちゃんって言う、幼なじみの女の子がいたんだ」
───ドクンッ
菅野さんに幼なじみの女の子がいた……たったそれだけの事にすら胸がザワついてしまう。
「紬季ちゃんはとにかく尊のことが好きで、おまけに甘え上手でいつもワガママ言っては尊を困らせてた。何だかんだ面倒見がいい尊も、紬季ちゃんのことを大事にしてるのが、俺たち近所に住んでるやつらには見てて分かった」
……っ、つまり、紬季さんは菅野さんのことが好きで、菅野さんもまた紬季さんのことを?
胸が痛いって、多分こういうことを言うんだろうな。ギュッて息するのが苦しいくらい、切ない波が押し寄せる。
「……だけどそんなある日、事件は起きた」