リペイントオレンジ🍊
「『大事な人を救えなかった自分の無力さを呪ったから』それが、尊が消防に入った理由だ」
「……っ、」
「尊は今でも後悔している。あの日、紬季ちゃんに会いにいかなかったことを。会いに行って、紬季ちゃんの気持ちを聞いてやらなかったことを。そして、あの日……燃え盛るオレンジ色の炎をただ見上げるしかできなかった自分を」
……苦しかった。
菅野さんの過去に、胸が張り裂けそうだった。
お母さんと、大事な幼なじみを奪った火災。
菅野さんが消防士として働き始めた理由。
そして、今も胸に抱える後悔。
消えないあの日の、オレンジ。
「やだっ、なんでしんおんちゃんが泣いてるの!」
「ご、ごめんなさっ……私っ、」
私は、バカだ。
大バカだ……。
『消防士って凄いですね。オレンジ色の炎を中でも怯まずに、人の命を助ける……』
『かっこいいです。あの時の菅野さんヒーローみたいでした』
あの時、私の軽率な発言で菅野さんの傷はどれだけ痛んだだろう。
『俺は、ヒーローなんかじゃない。ヒーローなんて呼ばれる資格もない』
『俺は、俺のためにこの仕事をしてる。誰かを守るためじゃない』