リペイントオレンジ🍊


あの時は、分からなかった菅野さんの言っている言葉の意味が、今は……痛いくらい分かるから。


ううん、分かるなんて……簡単に言っちゃいけない。きっと、私には永遠に分からない深い、深い傷を背負っているに違いないから。


「ずっと心配してたんだ。昔から尊を知ってる近所のおっちゃんとして、職場の上司として。でも、尾崎ちゃんと出会ってからの尊は少し変わった気がしてる」


堀さんの言葉に大きく首を横に振る。
……だって、そんなことないから。


「私、菅野さんのこと……何っにも分かってなくて……なのに、自分のことばっか必死でっ、」


きっと、菅野さんは紬季さんのことを想ってる。それを失って初めて気が付いたのかもしれない。

なくして初めて気が付くなんて、不器用にも程があるけど……何だか菅野さんらしいな〜なんて思った。


「もしかして……しんおんちゃん、尊のこと」

「……振られました。と言うより、なかったことにされちゃいました。……当たり前です。菅野さんの気持ち、何ひとつ考えてあげられないくせに、なにが"好き"だって話ですよね」


クイッとお酒をあおれば、体内に取り込んだアルコールが胸を焼く感覚を覚える。
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