リペイントオレンジ🍊


「好きだって言ってもらえることは、例えどんな形でも嬉しいものですよ」

「え……」


見上げれば、堀さんの奥さんが両手に皿を持ってニコリと微笑んでいた。


「さ、追加のおつまみできましたよ〜!どんどん召し上がって」

「わぁ、美味しそう〜!ありがとうございます」


突然来たのに、こんなにも温かく迎え入れてくれて、美味しくて温かい料理と、冷えたビール。

それから、サラッとくれた温かい言葉。
さすが、堀さんの奥さんだな。


「そう言えば、少し前に尊が言ってた。 "尾崎はオレンジなんですよ、眩しいくらい"って」


そう言って、まだ湯気が出ている熱々の餃子に箸を伸ばす堀さん。

それにしても、菅野さんの口から"尾崎"って言葉が出るのは想像がつかない。いつも、"しんおん"って呼ぶから。

"心音"

そういえば、菅野さんが私を名前で呼んでくれたのは、炎の……、菅野さんが大嫌いなオレンジの中だったっけ。


「だから、言ってやったんだ。ならいっそ、塗り替えちまえって」

「……塗り替える?」
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