リペイントオレンジ🍊
「そう。『なら、いっそ塗り替えちまえ。お前の中のオレンジを”あの日”から尾崎ちゃんに』ってね」
あの日から、私に……か。
そんな簡単じゃないことは重々承知だけど。
だけどもしも……本当に、もしも。
私が傍にいることで菅野さんにとっての"あの日"を少しでも薄めることが出来るなら、私は何度だって"そのオレンジ"を塗り替えて見せるのに。
堀さんの言葉に、頭の中では整理しきれない感情がバーッと溢れ出すのに、どれも言葉にならなくて、私はまた静かにお酒をあおる。
アルコールが喉にぶつかって、体の中に熱が広がっていく感覚に酔いが回り始めていることに気付く。
でも、想像すらしていなかった菅野さんの過去を知った今、そのあまりの残酷な現実に、私の体は無性にアルコールを求めている。
まるで、聞いたことなんて忘れてしまえと言わんばかりに、私の中の何かがそうさせる。
ううん、忘れない。
菅野さんの痛み、苦しみ、悲しみ、後悔。
もし今も菅野さんが、一人で抱えているものがあるんだとしたら、それを支えてあげられるのが私だったらいいなって思うから。
「……っ、ぅ……ふ、」
菅野さんを思う気持が、涙になって溢れ出す。