リペイントオレンジ🍊

「一夜の過ち……ねぇ」

「や、ほら。例えばの話ですよ?そういう事になっても自分の行動には自分で責任を、」


不意に強く腕を引かれて、私の体は前のめりに倒れる。それを、厚くて硬い胸板で受け止めた菅野さんは、そのまま私の顎をクイッと持ち上げる。


その一連の流れはあまりにも一瞬で、すぐに少しだけ乱暴に重なった唇から菅野さんの熱が伝わる。

突然のことに追いつかない思考と、酔いの回りきった体じゃ、徐々に深くなっていくキスに抵抗するという機能を持ち合わせるわけもなく。


「……んっ……んん」


ギュッと菅野さんの服の裾を握りしめて、ただただ、菅野さんを受け入れるだけ。


離れては、また塞がれて、その繰り返しでどんどん私の中の酸素が足りなくなっていく。



「……っ、はぁ、」


やっと解放された唇、大量に肺に流れ込む酸素、涙目の私と、無機質な瞳で私を見下ろす菅野さん。


「これくらいで泣くようじゃ、一夜の過ちなんて一生やめとけ」


「……っ、」


悔しいとも違う。
悲しい……とも、また違う。


少なからず好意を寄せている相手からのキス……なのに、どうしてこんなにもポッカリ心に穴が空いて、虚しいんだろう。
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