リペイントオレンジ🍊
「……将来の夢は、"さとこ先生みたいな優しい先生になること"」
「……っ!!それ、」
寒気がした。
鼻の奥がツーンとして、喉の奥に何かが詰まったみたいに苦しい。
「……俺も、最近確信した」
菅野さんの笑ってるのに泣いてるみたいな表情。
菅野さんから香る、なぜか懐かしいネロリの香り。
菅野さんが私のプロフィールの内容を知っている理由。
そして───。
大好きで仕方なかった、憧れのさとこ先生から、手紙の返事が途絶えた理由。
全部が、私の頭の中で繋がった。
「……嘘だ、そんなの、信じません……!!」
「まだ何も言ってねぇだろ」
「だって、だってだって……」
……思い出してしまった。
さとこ先生の名前が、菅野 聡子だったことを。
『紬季ちゃんを助けに入った尊の母親と、紬季ちゃんが亡くなった』
堀さんの言葉が、何度も頭の中で流れては、繰り返し私の涙を誘う。
「その反応じゃ、やっぱ聞いたか。……俺の中にある消えないオレンジ」
「……ごめ、……なさっ、」
「泣くなよ。お前に話すことくらい想定内だった」
もうすぐ、私のマンションに着くって言うのに、私の足はもう、歩き出せそうにない。
ここが人通りの少ない道でよかった。
危うく菅野さんを、"女の子を泣かせている男"に仕立てあげてしまうところだった。