リペイントオレンジ🍊
第四章
何よりも特別で大切な場所
***
菅野さんから連絡があったのは、それから数日後の金曜日だった。
───明日、空いてるか?
特に用事はないと伝えた私に『昼過ぎに迎えに行く』とだけ言って菅野さんからの電話は切れた。
菅野さんの声が、好きすぎて。
私は電話を切ってしばらく、その余韻に浸っていた。
***
「……お、お久しぶりです」
「ついこないだ会っただろ」
菅野さんと会う時はいつも、どこか緊張して身構えてしまう。
一瞬、デート?なんて浮かれたけど。
菅野さんのことだから、絶対そんなわけない……と、服もカジュアルめに決めて、足元はスニーカーだ。
対する菅野さんも、ラフなジーンズスタイルで、私服の菅野さんを見るのはいつもドキドキする。
「悪いな、休みの日に連れ出して」
「いえ。……それより、どこに行くんですか?」
菅野さんの車に乗り込んで、運転する菅野さんを盗み見る。
運転中の横顔。
まさか見れる日が来るなんて思っていなかった。
不意に視線が合って、ドキンっと心臓が跳ねる。見てたの、バレた!?なんて内心慌てる私に、
「着いた」
それだけ言って、菅野さんは最後のクランクを曲がった。