リペイントオレンジ🍊
「……ここ、」
車を停めたのは、全体的に趣があり、非常に手入れが行き届いているお寺だった。
境内はまるで京都の庭園を見ているように美しいこの場所に、
「ここに母さんの墓がある」
「……っ、」
ここに、さとこ先生が眠っている。
そう思うと、余計に神聖な場所のように感じられて、私はひとつ大きく息を吸った。
「いつも、ここに来るのは勇気がいる」
「え?」
「どんな顔して、母さんになんて謝ればいいんだろうとか。俺には来る資格がないんじゃないかとか。……考え出すと、ここに立つことが怖くなって、足が震える」
そう言った菅野さんの目は、悲しげで、だけどそれ以上に寂しそうだった。
「そんなに勇気のいる場所に、どうして連れてきてくれたんですか?」
「……会いたがってる気がした。母さんが、お前に。ここにお前を連れてこないなんて選択したら、それこそ母さんに叱られる」
さとこ先生のお墓までの道のりを、ゆっくり一歩一歩踏みしめて歩く菅野さんの背中を追いかける私は、菅野さんの言葉に胸がいっぱいになった。
「私も、さとこ先生に報告したいことが沢山、沢山あるので……連れてきてくれて、すごく嬉しいです。ありがとうございます」