リペイントオレンジ🍊


私を小さく振り返って、フッと口元を緩めた菅野さん。


勇気のいる場所に、私を連れてきてくれたことを”連れてきて良かった”と思って欲しい。


それに、この場所が菅野さんにとって”勇気のいる場所”じゃなくなってくれたら……そんなことを祈るのは私のエゴかな。


「……そうだこれ、渡し忘れるところだった」


菅野さんが持っていた小さな袋の中から、取り出されたそれに息を飲む。


「わ、さとこ先生の字だ」

「ポスト投函出来なかった、最後の手紙だ」



───中を覗けば、可愛らしい花柄の便箋に、優しい文字がびっしりと並んでいた。


運動会で会えて嬉しかったこと。


先生の学校の新しいクラスのこと。


私が当時、好きだった男の子のこと。


転任前に一緒に植えたお花が咲いたこと。

便箋いっぱいに、さとこ先生の人柄がギュッと詰め込まれたそれは、

『いつまでも素直で真っ直ぐな心音ちゃんでいてね。』


そんな言葉で締めくくられていた。
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