リペイントオレンジ🍊



***

───菅野家之墓


と書かれた墓石を前に、菅野さんは静かにしゃがみ込む。私もその隣に小さくしゃがんで、すぐに両手を合わせた。


ここには、さとこ先生だけじゃなく、菅野さんのお父様も眠っているんだろう。


よく手入れされた墓石には、まだ飾られてそう時間が経っていないであろう綺麗なお花が飾ってある。


「昨日も来たんだ」

「え?」

「先に、お前を連れてくることを報告しておこうと思って。……って、聞いてくれてるかなんて分かんねぇのにな」


そう言って、伏せ目がちになった菅野さん。

確かに、返事はないかもしれない。
でも……絶対、絶対、


「そんなの、聞いてくれてるに決まってるじゃないですか」

「……フッ、だな」

「にしても、律儀ですね。人を連れてくる前は毎回事前に報告されてるんですか?」


些細な疑問を口にして、再び菅野さんに視線を向ければ、思いのほか熱っぽい視線と絡まって呼吸が止まる。


「……え、あの」

「初めて。……ここに誰かを連れて来んのは、お前が初めてだ」

「……へ?」

「誰かとここに来る日が来るなんて、思ってもみなかった」


しゃがんだまま、膝の上に頭を乗せて横目で私を見ながら優しい顔して笑うのはずるいです。
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