リペイントオレンジ🍊
恥ずかしくなって慌てて目をそらすけど、そんな私をクスッと笑う音がした。
こうなったら、沢山沢山お話させてもらわなければ。さとこ先生に、14年分の私をご報告させてもらわねば。
スッ、と再び両手を合わせる。
フーッ、と息を吐いて私は静かに語りかけることにした。
「……さとこ先生、お久しぶりです。それから、菅野さんのお父さん、初めまして。尾崎 心音です」
「…………」
チラリと隣の菅野さんを見れば、いつから見ていたのか目が合って少したじろぐ。
「本来なら手を合わせて心の中でお話するべきなのかも……ですが、生憎、私は要領が悪いので。声に出してお話することにします」
「……好きにしろ」
ぶっきらぼうで、不器用で、愛想の欠片もなくて、初めはキツく感じた菅野さんの言葉も、今ではやけに優しく響く。
「さとこ先生、菅野さんのおかげで14年越しにお手紙読めました。
私、さとこ先生に報告したいことが沢山あるんですよ」
ポツリ、ポツリ話しかける私を隣で菅野さんは静かに見守っていて、何だかすごく温かい気持ちになる。