リペイントオレンジ🍊


「……今回は苦情も、担当者変更願いも出てない。しっかり頼むぞ〜」

「は?」

「ああっ!」


そうだ。
すっかり、担当者を変えて欲しいって言いそびれてしまった……。


「あの、堀さん!」

「尾崎さん。大丈夫、そいつが1番腕はいいですから。あと、そいつの弱点は、私です。何かあれば私にいつでも話してください」

「……そ、そんな」


ニコリと優しく微笑んで、50代半ばの堀さんは所長室へと入っていった。


……絶望だ。
まさか、この男が担当者続行なんて。


きっと、講話なんて頼んでも『は?拒否する』とか冷ややかな目を向けられること間違いない。


いや、でもそうなったら堀さんに……


「おい。……やるからには、手ぇ抜くなよ」

「え?」

「俺の仕事増やしたらタダじゃおかねぇからそのつもりでいろ」

「……えっと、」

「分かったら返事!」

「は、はい!」


って、なんで返事しちゃうかな、私。
全然分かってないってのに。
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