リペイントオレンジ🍊
「制服、オレンジじゃないんですね」
「……あぁ。消防士イコールオレンジみたいなイメージのアホが多いけど、オレンジの活動服は全国共通で救助隊だ」
「救助隊……」
「俺たちは消防隊。火災出動するのが仕事だ。救急隊は救命措置。救助隊は救助活動……それぞれ同じ消防吏員の中でも、与えられている仕事が違う」
「言われてみれば、そうですよね。普段、全くな意識したことなかったけど、火を消すだけが消防のお仕事じゃないんだ」
「そういう事だ。書けたか?」
「あ、はい……」
ヒラッと私の手元をすり抜けていく書類を目で追って、私の書いた文字に目を通す真剣な瞳に辿り着く。
「……尾崎、しんおん」
「”しんおん”じゃなくて、”みお”です!尾崎 心音!」
「フリガナ振っとけ、読めねぇよ」
ムッとする私に構いもせず、一通り読み終えたイヤミ男は、一番下の消防署側の担当者欄に名前を書き込み始める。
思った以上に綺麗な字で、サラサラっと。
「菅野……ソン」
「勝手に中国人にすんな」
「じゃあ、ミコトですか」
「……たかし」
「読めません、フリガナ振っといて下さい」
本当は、すぐに分かったけれど、分からない振りをしてここぞとばかりにやり返せば、ギロりと睨まれて縮こまる。