リペイントオレンジ🍊
私の名前を思い出したらしい堀さんは、消防署であった時よりも増してフランクで、私を親戚のおじさん並みにちゃん付けで呼んだ。
「保証する必要ないですから。こんなたまたま居合わせただけのポンコツ女」
「ポンコツって……てか、菅野さんは私の支えなんてなくても、迷惑なくらい凛としてらっしゃいますよ!」
目には目を歯には歯を、嫌味には嫌味をとばかりにツンとして見せれば堀さんは少し寂しそうに笑った。
「それが本当の凛々しさ強さなら俺も心配はしてないんだが。……尊、強がりはいつか心を壊すぞ」
”尊”
そう呼んだ堀さんが引っかかる。
だって、普段は……菅野って……。
「……堀さん。飲みすぎ」
「あぁ、ちょっと酔いが回ってきた。トイレで酔い覚ましてくる」
相変わらずハハッと笑う堀さんにはなんの反省の色もない。
「そうだ。尾崎ちゃん、1人?俺らの部屋で一緒に飲んでってよ」
「あ、いえ……!私は、同じ学校の先生たちと来てて」
「なら、みんなまとめて来てくれたらいい。賑やかな方が良い夜になるからね」
「いえ、私は」
断る間もなく、堀さんはスタスタとトイレの方へと消えていく。嘘でしょ……。