リペイントオレンジ🍊
「俺とお前の間に、何もなかったっていう証拠は?」
「え……?そ、そんなの私が何もないって言ったら」
「馬鹿か。そんなの、誰が信じるんだよ」
……む、むぅ。
口を開けば人のことを馬鹿呼ばわり。
ちっっとも優しくない菅野さんみたいな人とだけは、ワンナイトだろうと、ワンサマーだろうと、絶対恋なんかしない!!
もっと優しくて、穏やかで、朗らかで……って。今はそんなことどうでも良くて!!
「あと10分で支度しねぇと、家の鍵閉めて仕事に出るからな」
「……じゅ、10分」
「洗面所はあっちだ。つーか、一旦そのまま帰った方が早いんじゃねぇのか?」
「え?無、無理ですよ!職員会議まであと40分しかないし……え!?40分しかないの!?」
「自分で言って自分で驚くなよ」
時計の針は既に7時30分を回っている。今日は8時10分から職員会議があって……
待って、その前に生徒たちに配るプリント用意しなくちゃいけなかった……!
「と、とにかくここで支度させて下さい!」
「……それはいいが。うちに化粧道具はねぇぞ」
「……え、……ああああっ!!!」
「うるっせ」と耳を塞ぐ菅野さんなんて目に入ってこないくらい、私は今、かつてないほどのピンチに立たされた。