リペイントオレンジ🍊


「わ、私と菅野さんの間には、何にも!本当に驚くほど何にもないです!昨日だって、ただ送って……」


もらったわけじゃない。
つい、言葉に詰まった私を見て、木村先生はしたり顔。

あぁ。分かってる。
ここは”送ってもらった”で良かったのに、なんで変なところで嘘が付けない性格なんだろう。


これじゃ、また菅野さんに怒られる。
馬鹿!ってどやされる。


「コラコラ。あんまりいじめないであげなよ、木村先生!おはよう、尾崎ちゃん」


フワッと良い香りに包まれてふと見上げれば、すぐ側に榊先生が優しく笑いながら立っている。


……また、助けられてしまった。


「お、おはようございます。榊先生」

「もう〜!榊先生だって、本当は気になってるくせに。それに断じていじめてない。むしろアドバイスのひとつくらいしてあげようっていう、優しいお姉さん心です〜」


「ね〜?」と私に同意を求めた木村先生に、フッと笑う榊先生。


「……まぁ、確かに。眠れないくらいには気になってたかな。おかげで寝不足」

「えっ、」


榊先生の優しい瞳に見つめられて、口の中からどんどん水分が蒸発していく。

いやいや、榊先生ってば……またそんなご冗談を!

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