リペイントオレンジ🍊
「……お騒がせしてすみません。鍵、お借りします。鍵だけ探したら、すぐに帰りますので」
ペコッと小さくお辞儀して、慌てて菅野さんに背を向ける。そんな私の背中に「あぁ」とだけ短く返事があった。
いつもなら、もうご飯を済ませてお風呂にだって入ってる時間なのに……ついてない。
菅野さんの、厄病神。
……ううん、私の大バカ野郎。
はぁ、と自分にしか聞こえないくらい小さなため息を零して、消防署の外へと向かう私を、
「……もうひとつ、」
「え?」
菅野さんの声が呼び止めた。
つられるように振り向けば、ズボンのポケットに気だるそうに手を突っ込んで壁にもたれたままの菅野さんと目が合って……。
「もう遅い」
「?」
「だから。……気を付けて帰れ」
「っ、」
言いながら、ふいっと私から顔を背ける。
その仕草に不覚にもキュッと胸を掴まれるような感覚を覚えて、慌てて私も足元へ視線を落とす。
……な、なに!?
菅野さんのくせに、私のこと心配して……
「たまにいるだろ。女なら誰でもいい悪趣味な犯罪者」
「……、」
「お前ごときに出動することになったら、警察が不憫だからな。精々気をつけて帰れ」
そうだ、この男は……こういう男だった。