リペイントオレンジ🍊
「ち、違っ」
「尊って、本当に女心分からない生き物だから……嫌になっちゃったんでしょ?」
綺麗な顔を悲しそうに歪められると、何だか悪いことをしている気分になるからやめて欲しい。
「あの!そうじゃなくて、」
「ううん!違わない。私からも彼女を大事にするようにキツ〜く言っておくから、考え直してやって。ね?……あれでいて、優しいんだ。自分本位に見えて、実は周りのことばっかり考えてる」
「周りの、ことばっかり……」
「そう。見せないけど、誰より相手を思いやれる子だと思ってる。って、またブラコンって言われちゃう」
そう言って、私の手からピッとメモを取り上げた海穂さんは”これ、渡しておくね”とやっぱり悲しそうに微笑む。
海穂さんは菅野さんとは違った意味で勢いのある性格らしい。きっとここで、どれだけ否定しても、海穂さんの中に生まれた”尊の彼女”という先入観は消えないんだろう。
「……あとこれ、ここの鍵です。ポストに入れとけって言われたんですけど、お姉さんから返してもらえますか」
ここは、これ以上何も言わずに帰ろう。
どうせ、朝になれば頼まなくたって菅野さんが否定するんだろうし。