リペイントオレンジ🍊
「分かった。今日は泊めてもらおうと思って来たとこだったから、彼女さんに会えて逆に助かっちゃったな」
「……菅野さん、今日は仕事で帰らないはずなので、戻るのは明日の朝になると思います」
「そっか。じゃあ、勝手に寛いじゃお〜っと。あ!……名前、聞いてもいい?って言うより、なんて読むの?」
そう言って、メモに書いてある”心音”を指さす。
「”みお”です。尾崎 心音」
「みお、か。可愛いね、しんおんちゃん」
「……え、」
「2人のことだから、あまり口は挟めないけど。今度また尊と3人で会えたらいいなって思ってるからね!」
名前を聞いても尚、”しんおん”呼び。
……姉弟の血は濃いとみた。
とはいえ、悪い人じゃないのは話口調や仕草、笑い方、言葉選びから伝わってくる。
何だか、騙してるみたいで申し訳ない気持ちになるけれど、こうなればもう小さく頷いて曖昧に笑ってみせるしかなかった。
くるりと入れ替わって、私は玄関の外に。
海穂さんは玄関へ足を踏み入れる。
”遅いから気をつけて”そう言って手を振ってくれる海穂さんに、私は今度こそ小さく会釈して歩き出した。