リペイントオレンジ🍊


……捨てる側は、なんてことないのかもしれない。捨てられた側に、こんなにも深い傷が残ったままだってことも知らないんだろうし。


サーッと酔いが覚める感覚。

バカな飲み方をして拓也に見られてしまったことを今さら後悔しても遅いけど、せめて最後くらいシャキッとしたい。



「……心音?」

「ごめん、やっぱり今日はもう帰る」


あぁ、……来なきゃ良かった。
里奈に会えたのは嬉しかったけど、正直に拓也の存在に気を取られすぎて上の空だったし。

そういえば、里奈と何を話したのか思い出せない。


ふらつく足で立ち上がれば、そんな私の腕を拓也が掴んで支えてくれる。


「だから、送るって」


ふわりと香るのは、私の知っている拓也の香りとは違って、あの頃より無駄に甘ったるいそれがまた"拓也は変わってしまったんだ"と私に強く認識させる。


「大丈夫だから、」


放っておいて。



そう続けたかったのに、グイッと私の腕を引いた拓也に私は一歩踏み出していた。
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