リペイントオレンジ🍊


店の入口近くまで、ほぼ引っ張られるがままに足を進めて、断るタイミングを逃してしまったことに焦る。


「ねぇ、拓也……!私、」

「俺は!」


振り返った拓也の顔が見たことないくらい必死で、思わず何も言えなくなる。


「すげぇ後悔した。やっぱ、心音がいなきゃダメだって気付いた」

「……」


何を言われたって、私にはもう響かない。
そう思う反面、拓也の切なげな顔に胸の奥の方が苦しくなっていく。


「だから、戻ってくることに決めた。今さらだって思われても仕方ないと思ってる。でも……俺、今度こそ心音のこと」

「おい、帰るぞ」

「え……っ、」


拓也に支えられていたはずの腕を、するりと解く別の手。私の腰に回した腕に、ギュッと力を込めた。


「す、菅野さん……」

「飲み過ぎなんだよ、毎回。学習能力どこに置いてきた?」

「ご、ごめんなさい」

悪態つくのはいつも通りなのに、その瞳はいつもの数倍優しくて、勘違いしてしまいそうになる。


そ、そうだ……。菅野さんも海穂さんと一緒に飲んでたんだった。すっかり忘れてた。
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