リペイントオレンジ🍊
「素直だとそれはそれで、気持ち悪いな」
「ひ、ひど」
どうしてだろう。
こんなに意地悪なのに、菅野さんの言葉はホっとする。
「……心音、知り合い?」
私と拓也の間に入った菅野さんに、拓也が視線を向けていて、対する菅野さんは拓也のことなんて眼中にない様子。
「あ、えっと」
改めて菅野さんとの関係性を問われると困ってしまう。友達ではないし、仕事での付き合いがあったのも1度だけ、ただの知り合い……とはちょっと違う気もするけど、
あえて言うなら、ただの知り合いが1番しっくり来るんだろう。
自分の中で答えを出して拓也に向き直れば、
「彼氏だ」
「えっ、」
私よりもコンマ数秒早く口を開いた菅野さんの答えに、私の酔いが完全に覚めた気がした。
「こいつは俺が送って帰る。ほら、行くぞ」
私を気遣いながら、歩くよう促す菅野さんに従って、拓也に背を向ける。
「心音、彼氏いたんだ?」
背中から聞こえた拓也の声に、顔だけ振り向く。
「うん。そういうことだから、バイバイ拓也」
何か言いたげな拓也に再び背を向けて、菅野さんに支えられながら店を出れば、外の澄んだ空気が心地よく頬を撫でた。