リペイントオレンジ🍊
「菅野さん、"嘘でもしんおんの彼氏役なんてやりたくない"とか言いそうなのに。……それでも助けてくれたなんて奇跡だなぁって思って」
「……確かに。俺のだって紹介するなら、もっと品があって、胸があって、可愛げがある女が良かった」
「……品、胸、可愛げ」
菅野さんの挙げたポイントを繰り返しながら考える。……そうか、じゃあ私は菅野さんのタイプじゃないんだな〜って。
って!!!
これじゃまるで、タイプになりたいみたいじゃん。違うから!!
……違うよね?
「本気にすんな、ばか」
「あながち冗談でもないくせに。いいですよ、どうせ私なんか品も胸も、可愛げもないただの酔っぱらい女ですから」
「よく分かってんじゃねぇか」
ブクッと膨れる私を鼻で笑った菅野さん。
だけどやっぱり、そんな菅野さんにホっとしてしまう。
「ズルいですね、菅野さん。……意地悪なのに、優しいなんて」
「は?」
タクシーの揺れが心地いい。
目を閉じたらダメだと言い聞かせるほどに、私のまぶたは重くなる。
「菅野さんのこと好きになっちゃったら、どう責任取ってくれるんですか」
「……は?何言って……って、寝んなよ」
頭が真っ白で、やけにふわふわで気持ちいい。
肺いっぱい吸い込んだ空気は、優しいネロリの匂いがした。