リペイントオレンジ🍊


「俺はみおがいいんだよ!付き合え!」


正直、困ってしまう。
こんなにも真っ直ぐぶつかってこられると……無碍にできなくて。

とは言え、気持ちに応えることは絶対に出来ないし。


大きくなったら……なんて、保証のないセリフで曖昧に濁すのも良くない気がする。


「まーた、尾崎先生のこと困らせてんのか?」

「……あ、榊先生」


そんな困り果てた私の元に救世主、榊先生が現れて、蒼介くんにバレないように小さくホッとする。


「榊先生には関係ないだろ!これは俺とみおの、」

「じゃあ、”みおちゃん”に……そうだな、もし彼氏がいたら?蒼介よりずーっと、かっこいい彼氏」


───うっ


生憎、そんな人はいない。
だけど、これは榊先生の策略なんだろうと静かに見守ることに徹する。


ところが、なんと蒼介くんには効果絶大で……。


「え……!?みお、彼氏いんの?」


この世の終わりとでも言いたげに眉を下げ、さっきまでの強気はどこへやら。今にも泣き出しそうな顔をして私を見る。


「あ、……えっと。そうなの!実はすっごいかっこいい彼氏がいてね?」


泳ぐ目。
誰に聞いているのか、最後は謎の疑問形。

……私って、嘘をつくのが本当にヘタだ。
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