リペイントオレンジ🍊


───夢を見ている。

ひどく熱くて、苦しい夢を。


息すら出来なくて、誰もいない夢の中じゃ、どんなに頑張って手を伸ばしても誰にも届かない。

真っ暗で、音もない世界。

私はずっとずっと怖くて、逃げ出したくて、夢の中にいながら、これが夢だって気づいてる。

こんなに苦しい夢なら、早く覚めて欲しいって思うのに、誰も起こしてくれない。



助けて……苦しい……、


誰か……



お願い、ここから助けて……




「───心音!!」

「っ、」



いつの間に、意識を失っていたんだろう。
菅野さんの声が、聞こえた気がして目を覚ました私が見たのは、火の海だった。

あぁ、なんだ。
あの夢は……夢だけど、夢じゃなかったんだ。


「心音!!」


今度はもっと近くで、ハッキリと聞こえた声。
……防護服を着てたって、菅野さんだってことがすぐに分かった。

「……っ、すが、のさ」

「いい、喋るな。もう大丈夫だ、すぐこっから出してやる。……よく頑張った」


私を抱き上げる力強い腕に、菅野さんがくれた"よく頑張った"に、鼻の奥がツンとして、やけに安心して……気持ちがぐちゃぐちゃでまとまらない。


きっと私、菅野さんが来てくれるのをずっと

「待っ……、てた」

「っ……馬鹿」


───燃え盛るオレンジ色の炎の中、私を助けてくれた菅野さんは、まるでヒーローだった。
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