リペイントオレンジ🍊
「ったく、酔っぱらって寝落ち2回、挙句、火災現場で逃げ遅れ」
「菅野さん……」
「おい、しんおん。どんだけ俺に借り作る気だ?」
「……っ、」
じわり、じわりと涙が滲む。
目の前にいるのは正真正銘の菅野さんで、相変わらず私に毒を吐いているのに。
それが、やっぱり……こんなにも嬉しい。
「……あの、助けてくれてありがとうございました」
「仕事だからな」
「そ、それはそうですけど。消防士って凄いですね。オレンジ色の炎を中でも怯まずに、人の命を助ける……。かっこいいです。あの時の菅野さんヒーローみたいでした」
「俺は、ヒーローなんかじゃない。ヒーローなんて呼ばれる資格もない」
「……え、」
「俺は、俺のためにこの仕事をしてる。誰かを守るためじゃない」
菅野さんの言っている意味が分からなくて、首を傾げるけれど、菅野さんがそれについて深く説明をしてくれることはなかった。
代わりに、さっきまで榊先生が座っていたパイプ椅子にドカッと腰かけると、コンビニの袋から大量のパンをベットに並べた。