リペイントオレンジ🍊
「……寝込み、襲わないで下さいね」
「品、胸、可愛げ」
「あー!!もう、またそれ……酷い」
ズルい。
ズルい、ズルい。
簡単に優しくして、私の心を掴んでしまう癖に、菅野さんの心にはかすらせてももらえない。
"菅野さんのこと好きになっちゃったら、どう責任取ってくれるんですか"
……今まできれいさっぱり忘れていたのに、今になって、タクシーの中で寝落ち寸前の自分が言った言葉を思い出した。
同時に、名刺に書かれていた菅野さんの言葉も。
【責任は取らない】
「……フッ。思ってた3倍は元気だな。これなら付き添いもいらねーな」
「え、そんな……1人にするんですか?」
「嫌なら、早いとこ品と胸と可愛げ身につけろ」
「むぅ……いいですよ。1人でも別に平気ですし」
責任を取ってくれないなら、いっそ。
これ以上の優しさを知って、沼にハマってしまうことだけは避けたい。
そう、思っていたのに。
「分かってねぇな。……そんな顔されたら帰れるかよ」
「っ、」
気付いてしまった。
……もう、引き返せないところまで来てしまっているんだってことに。とっくに、菅野さんの沼にハマってたんだってことに。
───もう、
「菅野さん……、好きです」
後に引けないってことに。