側にいて

一人になった病室で涙はため息を吐き出した。

窓の外ではゆっくりと日が沈んでいく。

涙はベッドから立ち上がり窓に近寄った。

滴には元気だと言ったが正直余り体調は良くない。

でも滴には心配をかけたくなかった。

ただでさえ、3年前に両親を亡くして滴には迷惑と心配をかけているのだ。

少しくらい強がらせて欲しいと、涙は思う。

そんな時、病室のドアがノックされる音がした。

「はい?」

「涙?」

すると白衣を着た刹那が入ってきた。

「あ、刹那」

「うん。って、熱あるのになにしてるの。」

刹那は呆れたように言う。

「だってー」

「だってじゃない。そんなんだと外出許可出してあげれないよ?」

そう言う刹那に涙はムッと膨れてベッドに大人しく横になった。

「初めからそうすればいいんだよ。」

「ごめんなさい。」

涙は言い訳するのを諦めて大人しく謝った。

刹那は涙と滴の従兄弟だけどここ、館花総合病院の跡継ぎで涙の主治医だ。

「全く、手のかかる患者だよ。」

刹那は呆れたように言うが口角は少し上がってる。

こういう時の刹那は少し意地悪だ。

心を許さない人にはとことん冷たく普段は怖いほど無表情だ。

だけど涙たちの前では少しだけど表情が変わる。

特に婚約者の涙の前では。

涙も涙でそんな刹那を分かっているからこそ刹那を愛しく思う。
< 5 / 35 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop