側にいて
一人になった病室で涙はため息を吐き出した。
窓の外ではゆっくりと日が沈んでいく。
涙はベッドから立ち上がり窓に近寄った。
滴には元気だと言ったが正直余り体調は良くない。
でも滴には心配をかけたくなかった。
ただでさえ、3年前に両親を亡くして滴には迷惑と心配をかけているのだ。
少しくらい強がらせて欲しいと、涙は思う。
そんな時、病室のドアがノックされる音がした。
「はい?」
「涙?」
すると白衣を着た刹那が入ってきた。
「あ、刹那」
「うん。って、熱あるのになにしてるの。」
刹那は呆れたように言う。
「だってー」
「だってじゃない。そんなんだと外出許可出してあげれないよ?」
そう言う刹那に涙はムッと膨れてベッドに大人しく横になった。
「初めからそうすればいいんだよ。」
「ごめんなさい。」
涙は言い訳するのを諦めて大人しく謝った。
刹那は涙と滴の従兄弟だけどここ、館花総合病院の跡継ぎで涙の主治医だ。
「全く、手のかかる患者だよ。」
刹那は呆れたように言うが口角は少し上がってる。
こういう時の刹那は少し意地悪だ。
心を許さない人にはとことん冷たく普段は怖いほど無表情だ。
だけど涙たちの前では少しだけど表情が変わる。
特に婚約者の涙の前では。
涙も涙でそんな刹那を分かっているからこそ刹那を愛しく思う。