2月からの手紙

菜々美のコスメポーチを閉める音と足音が廊下に出た音を確かめてから、ゆっくり扉を開ける。


洗面台の蛇口をひねって、思いきり顔を近づけて水を浴びた。


頭の中の声を振り払いたくて、メークとか、前髪とか、そういうのもうどうでもいいと思った。


溢れて止まらない涙も、水しぶきで隠れてちょうどいい。

ひとしきり水を浴びたら、少しクールダウンできたみたい。


タオルハンカチであちこちにはねた水しぶきを拭きとっていたら、野崎さんが入ってきた。

タイミング……。
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