2月からの手紙

ふいに、小鳥遊くんのスマホが震えた。

短い通話のあと、小鳥遊くんの表情からは笑顔が消えていた。


「わり、急用できたから、行くわ」

「あっ、うん、じゃあね」


駅に向かって走る後姿は、雑踏に紛れてすぐに見えなくなった。

なにか、あったのかな。

明日学校で会ったら聞いてみよう。


帰りの電車の中で袋を開けてみたら、小さなハートやリボンのモチーフがひとつずつ付いたシルバーのヘアピンセットだった。


すごく可愛くて、嬉しくて、胸がきゅーっと熱くなった。


男の人に何かもらうなんて、初めて。


ドキドキが止まらなくて、小鳥遊くんが触れた唇を何度も指で確かめてしまう。


この日は夜も胸の奥が熱いままで、全然眠れなかった。

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