2月からの手紙

「はあ、このぶんじゃ始まるまでに着けそうにないな……っておい、どうした?」

「……っ、んでも、ないよ。だいじょ……ぶ」


振り向いた小鳥遊くんに、泣いているところを見られてしまった。


「大丈夫ならなんでそんな泣いてんだよ、下駄、痛いのか?」

「違……」

「じゃあ足踏まれたか? 帯が苦しいのか?」

「ちが……ほんとに大丈……」


花火に向かう人たちが、私たちをチラチラ見ながら通り過ぎていく。

みんな、迷惑そうな顔に見える。

ただでさえ混んで進みが悪い道で立ち止まってたら、そんな顔をされるのも当然だ。


巻き添えをくった小鳥遊くんが、舌打ちする人に「すみません」と謝る。

こんな面倒くさい子、余計に嫌われちゃうよね……。

だめな方、だめな方へと、どんどん気持ちが落ち込んでいく。

< 89 / 194 >

この作品をシェア

pagetop