2月からの手紙

「あ」

「始まったみたいだな」


時間通りに花火が打ちあがりはじめたようで、建物の隙間から明るい光が差し込んできた。


目的地には、着けそうにない。

けれど、私にとって花火はそこまで重要じゃなくって、こうして手をつないで歩く時間が嬉しい。


沸きあがる歓声や、体にずしんと響く花火の音、そんな非日常感で、高揚してくる。

そんな時間を、小鳥遊くんの隣で過ごすことができる。

なんだかもう、それだけで十分だった。


少しずつ少しずつ、花火に近づいているのがわかる。

けれど、オフィス街に差し掛かって周囲の建物がぐんと高くなっていくようだ。

建物の隙間から、時々ほんの一部分だけ花火がのぞく。

色とりどりの光が、空を明るくする。

さっきまでの靄がかかったような私の気持ちも、それに合わせて視界が晴れてくる。

< 93 / 194 >

この作品をシェア

pagetop