秘密の恋はアトリエで(前編) 続・二度目のキスは蜂蜜のように甘く蕩けて
大学1年、春から夏

1)

 4月1日。

 もう春とはいえ、まだまだ肌寒い入学式当日。

 広い講堂には五百人を超える新入生が集まり、学長の挨拶に耳を傾けていた。

「諸君、入学おめでとう。これからは本学の一員であるという自覚を持って、勉学と制作に力いっぱい励んでください――」

 あとどれぐらいかな。

 原田夏瑛(かえ)はいならぶ来賓を横目で数える。

 ふー、まだまだかかりそう。

 あれから、約1年の受験生生活を経て、夏瑛は晴れて叔父、秋庭啓司の務める美大に進学を果たした。

 これからの大学生活への期待とほんの少しの不安で、夏瑛の心ははちきれそうだった。
 壁際に並ぶ教職員のなかに靭也(ゆきや)もいる。
< 1 / 73 >

この作品をシェア

pagetop