秘密の恋はアトリエで(前編) 続・二度目のキスは蜂蜜のように甘く蕩けて
「夏瑛は付きあっている人、いる?」
「えっ、い、いないよ」
「へえ。それ聞いたら、北川が喜ぶよ。きっと」

 北川? ああ、同じクラスの男子だ。
 いろいろ親切にしてくれる人で感じがいいとは思ってたけど。

「なんで北川くんが出てくるの?」
「もお、夏瑛ってほんとにぶいよね。あれだけ、〝原田さん大好き〟オーラを出してるのに、北川もちょっと気の毒だね」
「そんなこと、ないって」

「やあ、夏瑛。ちょうどよかった」
 そのとき、廊下の方から大きな声が聞こえた。
 叔父だった。

「あっ、秋庭先生だぁ。あたしのタイプはあの先生」
 美岬がささやく。
「なんかお茶目で可愛いし、髭(ひげ)が渋いし、それに先生の描く水彩画の透明感、しびれるのよね。もう今から先生のゼミに入るって決めてるんだ」

「秋庭先生って、……わたしの叔父さんなんだ、実は」
「あっ、だから先生〝夏瑛〟って呼んだのか。いいなあ。ねえ、紹介して」
 
 気づいてはいたが、美岬はなかなか独特な感性の持ち主だ。
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