秘密の恋はアトリエで(前編) 続・二度目のキスは蜂蜜のように甘く蕩けて
「ぼく、これからちょっと急ぎで出なきゃなんなくてさ。これ、沢渡先生のところに持っていってくれるかな」と大きな茶封筒を渡された。

「実は2、3日渡すのを忘れててさ。急ぎだから今日中に持って行ってほしいんだ。別館のアトリエにいるはずだから」

「うん、いいよ」

 美岬が横から肘でつんつんつついてくる。

「あ、叔父さん。この子、平野美岬。同じクラスの子なの」
「おお、平野くんだろう。知ってるよ。そうか。夏瑛のこと、よろしく頼むよ」
 にっこり笑ってそう言うと、叔父は大急ぎでばたばたと去っていった。

「キャー、知ってる、だって! やったー」
 美岬は顔を真っ赤にして言った。
 叔父さん、だいぶ惚れられているみたい。

「美岬、沢渡先生のところ、一緒に行ってくれる?」
「ああ、ごめん。あたしもう帰んなきゃいけなかったんだ。小学生の稽古を手伝う日だから、道場にいかなきゃ」

 時計を見て、美岬はあわてて立ち上がり、荷物を抱えた。
 でも、正直に言えば、ちょっとほっとした。
 靭也のところに行くのはひとりの方がいいに決まっている。
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