秘密の恋はアトリエで(前編) 続・二度目のキスは蜂蜜のように甘く蕩けて
 沢渡靭也(さわたりゆきや)、この大学で助手を勤めているのだからそこにいるのは当然だけれど、彼は夏瑛の最愛の人でもあるのだ。

 遠目にも靭也の容姿は際立っている。
 均整の取れたスラリとした身体つきで、ダークグレーのスーツをすっきりと着こなしている。

「ねえ……あの先生、やばい」
「うわ、美形」
 近くに座っている子たちが靭也を見て小声で話している。

 どこにいても靭也は注目の的だった。
 ふたりで街を歩いていても、すれ違いざまに視線を感じることがある。
 靭也への称賛と自分への羨望(せんぼう)のこもった眼差しを。

 学校でも靭也が会えるのは嬉しかったが、正直、少し困ったことになったとも思う。
 ふたりの関係をまわりに知られないようにしなければ。

 でも、そんなことできるのだろうか。
 ただでさえ靭也には注目が集まってしまうのに。
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